日々のメモ書き

[読書記録] 山椒魚戦争

山椒魚戦争 (岩波文庫)

山椒魚戦争 (岩波文庫)

ハロー、人類諸君! さわがないでいただきたい。われわれは生きるために、より多くの海、浜、洲を必要とするだけなのだ。 われわれの数は多すぎる。諸君の海岸にはもはや住みきれぬ。そのため諸君の大陸をちょうだいしなければならぬ。 諸君は内陸部へ移住すればよろしい。山間部へ引きこもればよろしい。

1930年代のSF作品。 高度な知能を持った山椒魚と人類が戦うという一見、「そんな馬鹿な」と一蹴してしまう設定であるが、 その実、当時の世界情勢、特に欧州における(第二次世界大戦を予感させる)雰囲気に対する風刺小説だ。

(弱者の立場である)知能を持った山椒魚たちが、人類の代わりに労働を強いられる。皮肉にも人類の庇護下に置かれた山椒魚たちは 世界各地で大増殖し、最終的には人類とのすれ違いにより、人類に対して宣戦布告を行う。

作中では山椒魚として描かれていた存在を別の立場へと置き換えてみると、より作品を楽しめる。