日々のメモ書き

遅考術 じっくりトコトン考え抜くための「10のレッスン」

遅く考える術、遅考術、という本書オリジナルの言葉がタイトルになっている。 一般的に「頭がいい人」とは、頭の回転が早い、説明が得意、抽象的な思考に強い、といった特徴を持った人のことが思い描かれることが多い。 しかし、著者は「遅く考えられる」という能力も重要であると述べている。

遅く考えることが重要なのは「気をつけないと間違える場面」や「多様な可能性を考慮すべき場面」。 こういった場面では、所謂直感的な考えだけでは対応できないこともあり、大きな勘違いやミスに繋がる可能性がある。 そこで大事になってくるのが直感的な発想に加えて遅く考えること(遅考する)、というのが著者の考えだ。

この本を手に取ったきっかけは、自分自身が仕事などを進める上で、直感的・瞬間的な判断・思いつきのみで物事を進めてしまい、 後々後悔したり、ミスに繋がったりした経験が多々あり、そういったミスを減らしたいと考えたためだ。

本をしっかりと読み込むことで、まず自分の直感的な判断や言われたことに対して、まずは否定して考えてみる、ということが 意識的に行えるようになる。少なくとも、否定して考えてみることの重要さがよく分かるようにはなった。 あとは如何に日常的に使いこなすようになるか、という話である。 また否定して考えることで、問に対する本質的な部分もより強く意識できるようになりそうだと感じる。

本書で気になった点は本書のユニークな部分(遅考)は前半に集中しており、 後半はクリティカルシンキングなど他の思考術の本に書いているような内容だった点が少し残念。

本書で良かった点は、 「遅く考える」という概念に気がつけたことに尽きる。 直感的・瞬間的・経験的な判断の危うさを本文中の例題でしっかり示してくれるので、 遅く考えることの大事さがしっかり伝わった。 今後は遅考を意識したい。

最後に印象に残った本書で引用されていたアリストテレスの言葉を引用したい。

強制されないものは快い。その意味で、安穏、急速、眠り、遊びなどは快だ。他方で、強制とは自然に逆らうことだから、苦痛を伴う。 「必然に縛られたることは、そもそも、なべて苦しきものなれば」。たとえば、神経を集中させていたり、真剣な努力を重ねたり、緊張の糸を張り詰めていたりすることも、苦痛だ。 けれども、こうしたことは、習慣づけられていれば、快に変わっていく。